平成26年度 川での経験調査 結果報告(大台町内小学校)
1.学校別・男女別割合
宮川小学校の学区のみ一級河川宮川へのアクセスが可能な場所が存在する。また、漁業者が多く、伝統文化等も残っている。三瀬谷小学校学区は三瀬谷ダム周辺部に位置しており、本流へのアクセスはできない。日進小学校は宮川中流域に位置しており、川魚漁業者がいる。
2.結果
- 質問1:今年の夏、川(谷川などの小さな川も含む)へ行った経験(学校の授業以外)
- ■約7割の児童が夏期に川へ行ったと回答した。ただしうちその半数以上の約4割が、月に1-2回程度と少ない回数に止まっている。川へ頻繁に行く(週一回以上~)と回答したのは約3割であった。
川へ行かなかった児童も約3割存在したが、川が嫌いだから行かないと回答した児童は1人のみであった。川が好きだが行かないと回答した児童の、川へ行かない理由は、遠いことや他の遊びのほうがおもしろいなどが上げられた。
- 質問2:夏以外(今年の春や秋、冬)に川へ行った経験
- ■約7割が夏以外は川へ行っていない。夏へも川へ行っていない児童は夏以外にも川には出かけておらず、約3割は年間を通じて川には出かけていない。また、川へ行く回数ではあるが、8回(三瀬谷小学校)と10回(宮川小学校)が多い回数であった。伝統的漁法においては、夏期以外にも頻繁に川で漁をしているため、夏期以外でも川に行く機会があっても不思議ではないが、夏期を含めても川に行く機会が非常に少ないことがわかる。
- 質問3(夏期川へ行った人のみ回答):川への移動手段(一番多かった方法)
- ■半数以上が車で送迎されている。よって、児童が川での体験をしようとすると、大人の協力が必要である。
- 質問4(夏期川へ行った人のみ回答):川へ行く時、一緒に出かける人
- ■父親と母親が一番多く、両者合わせると半数以上となった。家族に連れて行ってくれる人がいることが、川に行ける最も良い条件である。他に同級生や上級生等、子どもたちだけで川に行くケースも確認できた。
- 質問5(夏期川へ行った人のみ回答):川での遊び(複数回答)
- ■川での遊びは泳ぐ、魚を採る・釣る、飛び込み等が上位を占めた。
- 質問6(夏期川へ行った人のみ回答):魚とりをした人の魚の取り方(複数回答)
- ■釣り竿(買った物)が一番多く、たも網やペットボトルの仕掛など手軽に購入できたり、自分で作ったりできるものが上位を占めた。ただ手作りの釣り竿や友釣り、しゃくり、もうじ(竹)等伝統漁法を実践した子も少数ながら存在する。
- 質問7(夏期川へ行った人かつ魚を採った人のみ回答):採った魚の種類(複数回答)
- ■アユは宮川では最も価値が高く人気のある魚種である。宮川流域には鮎を捕るための漁法が発達しているため、川へ鮎釣りの目的でも行くことが多い。その他、ブラックバスなどもあげられたが、三瀬谷ダム湖内で繁殖しているためであり、スポーツフィッシングの対象種である。
- 質問8(夏期川へ行った人でかつ魚を採った人のみ回答):採った魚をどのようにしたか
- ■逃した人が最も多かった。アユとアマゴは食用にされるが、その他の魚は雑魚であり、食料に不自由しない現代では食べられることが少ない。逃したとの回答が最も多かったと言うことは、レジャーの一種として魚採りをしたと推察できる。
- 質問9(夏期川へ行った人のみ回答):川での遊びや魚の採り方を教えてくれた人
- ■父親が圧倒的に多く、次いで祖父母(恐らく祖父)が上げられた。川での遊びや魚採りなどを習得するには家族の関与が大きい。また教えてもらっていないとの回答もあり、誰からも教えられる機会のない子どもが存在することがわかる。
- 質問10(夏期川へ行った人のみ回答):川へ行った理由
- ■家族で一緒に行ったという回答が圧倒的に多い。他にはイベントや授業で川に行く機会があったと言う回答もあった。家族が子どもたちの遊びに関与しにくい昨今、イベントや授業で川へ行く機会を増加させるのも一つの手段である。
3.考察
大台町の誇るべき自然の一つとして上げられるのは、清流宮川である。国土交通省の調査で日本一水質の美しい川として選ばれるほどの美しさ、また、源を大台町最高峰大台ヶ原山に発することより、町を東西に貫くように流れていることからも、川と町民との密接な関係がうかがわれる。
昭和30年代に本流に2カ所のダムが建設されたことにより、人と川との生活が大きく変化した。本事業では、70代以上への聞き取り調査も実施しているが、高齢者の子ども時代と今の子ども世代との大きな違いが既に浮き彫りになっている。
本調査において明らかになったことに、まず「児童の川へ行く回数の少なさ」が上げられる。頻繁に川に行く(週1回以上~)児童数は約3割に止まっている。月1-2回もしくは川に行かない児童の割合は7割に達している。
宮川には伝統的に継承されてきた、貴重な伝統漁法が存在しており、この伝統漁法の継承の基本中の基本として、川に頻繁に通い、勘を身に付け、コツを覚えることである。しかし、現状の川へ行く回数では、継承は元より、川に対して意識する機会さえあまりないと推測できる。この現状では伝統漁法の継承のような高度な伝承は現状では難しいと言わざるを得ない。
今後、まず子どもたちに川への意識を持ってもらうためには、家族の関わりが大切であることが推測できる。例えば、川への移動に車を必要とする事や、一緒に川に出かけた人で父親をはじめ家族が半数以上を占めること、川での遊び方や魚の採り方を教えてくれるのもまた家族である。
しかし、核家族化して、家族の人数が少なくなり、一緒に川に行ってくれる家族や大人がいなくなっている今、子どもたちを川へと連れ出す機会の増大に、家族の関与を期待することはできない。
よって、対応策としては、川に行く機会を少ないながら提供していた、学校の授業や体験活動など、家族以外が提供できる、多くの機会を子どもたちに与えていくことが考えられる。
本事業は伝統漁の価値の再認識とその継承が目的である。しかしながら、物理的にも精神的にも川が人から遠くなり、継承にはほど遠い現状であることが本調査により明らかとなった。今後は、川での経験値を高める体験を増加させながら、同時に継承についても調査を実施していく。